サタデーレクチャー

昨日は都の西北の森まで。

早稲田大学エクステンションセンター主催
「勧進帳を解く」〜幸四郎家畢生の大演目
の講義を聴きに行ってきました。

講師は常磐津の鈴木英一さんと
歌舞伎役者の松本幸四郎丈。

松本幸四郎にとって、幼い頃から憧れ続けていた
勧進帳の弁慶がどれだけ大きな役であるかといったことや
平成26年11月、いきなり本丸歌舞伎座での弁慶初役に至るまでのこと
昨年9月の秀山祭で仁左衛門と日替わりで務めた勧進帳の苦労話、
これからの覚悟など、90分に亘ってお聞きしました。

歌舞伎十八番の演目「勧進帳」は様々なお家の役者がされていますが
その家々での所作の違いなども含め、映像も交えての講義に
90分が短く感じたほどでした。

幸四郎丈がお話しされていた舞台上でのお気持ちと
自分の舞台での気持ちと共通するところが多くあって、
なんだろう、心強い気がしました。

弁慶の初役の時、
「これだけ憧れていたのに、知らないことだらけだった」
というお話から始まって

花道には返しがないので、自分が発する第一声が
こんなに小さいのか、と思うそうですが、
弁慶が花道から登場する第一声をどう出すかが一番の難所で
稀代の名優と言われた七代目幸四郎でさえ
「第一声をちゃんと言えるかが一番怖い。
ちゃんと言えれば、ああ大丈夫と思う」と仰っていたとか。

私たちも、ハーモニカは音の場所を
目で見て確かめることができないですから
いかに出だしのミストーンをしないか
神経を集中しますし、仲間内でも
どう工夫しているかなどが話題に上ることがあります。

また、弁慶は常に訊かれたことに答える役ですから
堂々と、力強く声を発しなければいけないものの、
それが怒鳴っているように聞こえてはいけない、
気持ちが昂っても喧嘩をしているように見えてはいけないそうです。

音楽もそう。
フォルテやフォルテシモを奏でる時でも
騒音にならないように、
ピアノ・ピアニシモも
弱くてもちゃんと聞こえるように。

他にも印象に残った言葉がたくさん。

その役の解釈として、
その役がとても極まる(きまる)やり方もあるけれども
役がよくなっても、「歌舞伎芸としてはどうなんだろう?」
と思うことがあります。

20歳、浅草公会堂で義経初役をしたとき、
義経の先に弁慶はないと思っていた。
弁慶をやりたいという気持ちを消さないと
義経をできないと思っていた。
いざ弁慶をという話が来たときに
弁慶は義経の体ではできない、
声も体も弁慶にならなければいけないから、
もう義経は最後かなと思っていた。

など。

それから、初役の弁慶がいきなりの歌舞伎座で
富樫は父君、義経を人間国宝で叔父の吉右衛門丈が勤められ
嬉しい反面これは何かの罰ゲームなのかと思ったとか
右を見ても左を見ても弁慶役者がいるので
「ゴメンナサイ、偽者です・・・」と思ってしまったなど
幸四郎丈のお茶目なお人柄が垣間見えるお話がたくさんありました。

本来ならば昨年10月に行われていたはずのこの講座、
台風の影響で延期になったそうで、昨年11月に募集を知ったわたし。

ラッキー!

祖母がよく七代目幸四郎の思い出話(ベタ褒め)をしていて
えー、ほんとに?とか思っていたんだけれど
七代目の飛び六方の資料映像を観て
腰を抜かすほど驚いたし、かっこよかったんで
おばあちゃん、疑ってごめんって言っておこう。