国立劇場初春歌舞伎

今年もお正月は国立劇場の菊五郎劇団から。
劇場外には毎年恒例、会津の末廣酒造さんの樽酒。


プログラムも購入していざ。

もう20年近く、お正月は国立劇場。
まだ元気だった祖母と来たときには
十八代目勘三郎丈と隣の席になって感激したり
大詰めで撒かれる手ぬぐいが飛んできたり
なかなか楽しい経験をしました。


今年は令和になって初めてのお正月、
演目も元号にちなんで
「菊一座令和仇討(きくいちざれいわのあだうち)」
お正月らしく華やかで活気のある舞台でした。

やっぱり座頭は菊五郎丈で、
菊五郎丈が出てくるとそれだけで場が締まる。
あの桁違いの存在感は圧巻です。

でも、今回は菊之助丈と松緑丈の二人が
かなりの重責を担っていて
時代は変わってきているなと感じました。
松緑の踊りの巧さ、所作の美しさにも磨きがかかっていました。

彦三郎・亀蔵兄弟も
しっかり劇団の中心を担って
いい立役者です。

ハモニカ界もそうでありたい。

そしてなにより、松緑の子息左近君が丁寧に芝居をしていて
大切に育てられ、自らも意思を持って勉強をしていることが感じられ、
丑之助になった和史くんや新之助になるカンカンとは
少し年が離れているけれど
これからの歌舞伎界を一身に背負う役者に
なることは間違いないだろうと
嬉しくなりました。

新作や復活狂言をする場合、
どのくらい前から台本を作るのでしょうね。
ドラマ出演と並行して新作歌舞伎の座頭をした菊之助丈も
お怪我を感じさせない動きでした。

毎年のことですが、年末の幸四郎丈のチャップリンといい、
大変大きな刺激を受けました。

わたしもがんばろう。

謹賀新年

新玉の年の初め、お健やかにお過ごしのこととお慶び申し上げます。

昨年は多岐に亘る新しい経験を積むことができました。
皆さまに御礼申し上げます。
また本年もどうぞよろしくお願いいたします。

令和二年元旦
寺澤ひろみ

チャップリン歌舞伎

本年は喜劇王チャップリンの生誕130年という
メモリアルイヤーでもあるそうです。

国立劇場十二月大歌舞伎では
「Chaplin Kabuki Night」という催しが開かれました。

チャップリンの映画「街の灯」を歌舞伎にしたものを
若干手直しして当代の松本幸四郎丈が演じるというもの。
以前からチケットを手配していたので楽しみに出かけました。


ロビーにはお二人のパネル


上手下手にはそれぞれロゴマーク
下手のロゴはちょうど花道で見栄を切る向こうに
ロゴが見えるようになっているという巧い演出でした。

この歌舞伎は、映画「街の灯」が日本で封切りになる前に、
海外での評判を聞いた戯作者が
いろいろな人に取材して歌舞伎にしてしまったというものだそうで
その本に今回チャップリンフリークでもある幸四郎丈が
手を加えて上演となったそうです。
もうね、【チャップリン大好き感】がよく伝わってくる!
表情の作りかたやモーション、ペーソス、笑いの広げ方。
先月の「研ぎ辰」でも思ったけれど
幸四郎はこういうお役だと生き生きとしていますね。




プログラムに載っていた幸四郎=チャップリンのブロマイド。
最後のはにかみ顔なんて生き写しのようです。

筋は割愛しますが
最後の蝙蝠の安さんのセリフ
「いけねえいけねえ。
恩は掛けるもんじゃねエ…恩は着るもンだ!」
にはハッと胸を突かれました。

開演前のBGMも古き良きアメリカの音楽のような
映画音楽のような、某浦安の遊興施設の入場の音楽のような
うきうきするようなもので、
お囃子だけでなくてたまにはこういうのもいいと思いました。

チャップリンのお誕生日は4月16日。
命日は12月25日。
佐藤秀廊先生のお誕生日は12月25日。
うちの父の自慢はチャップリンと誕生日が同じこと。
なんか嬉しいねえ。

矢来能楽堂「土蜘蛛」

「はじめての矢来能楽堂special 能「土蜘蛛」をみる!」
に行ってきました。

歌舞伎の演目としては何度も観たことがありますが
お能でははじめてです。


まずは玄関前に等身大のパネルがお出迎え。

はじめての方向けに、
演目前に観世喜正さんによる
あらすじの解説と、謡の体験ができたので
今まで格式が高くて難しそうとしか思えなかった
お能の舞台が、あっという間に身近な演劇に。

とにかく蜘蛛の糸がシュルシュル飛んでくるのが面白くて
(一巻き5千円くらいするって本当かしら?)
スペクタクル度が高い。

まずお目にかかることのないカーテンコールも。


土蜘蛛の精


源頼光公と怪僧。
左端の方が地謡と解説の観世喜正さん。


それぞれの演者さんが
いろいろとポーズをとってくださいます。

そして、最後の最後には表で記念撮影まで。

頼光公役の鈴木啓吾さんと。
なんと、この方も
明治大学文学部文学科日本文学専攻のご卒業だそうで
思わぬご縁にびっくり。

なんとも愉しい晩でした。

吉例顔見世大歌舞伎

思い立って歌舞伎座昼の部へ。

前々日にチケットを取ったにもかかわらず
一人だったからか最前列のど真ん中。

わおー。ど迫力。

「研ぎ辰の打たれ」

「関三奴」

「髪結新三」

幸四郎の「研ぎ辰」が面白かった!!!!!
劇場内を走り回ったり
水しぶきが飛んできたり
セリフを噛んだのをツッコんで
笑いを堪えながら演っていたり

幸四郎(研ぎ辰)の仇兄弟が
坂東彦三郎と亀蔵兄弟だから
とにかく3人の仲の良さ
同世代の絆の強さがよく出ていて
好きなことが好きなようにできている感じが
生き生きとしてよかった。

「研ぎ辰」をこの形にしたのは十八世勘三郎で
彼の意思はまだ生きて、しっかりと受けつがれていることを感じられて
何と嬉しかったことか!

それにしても、役者さんはしぶきの飛ぶ角度まで計算して
大桶に飛び込むことができるんですね。
実は、一列目だったので張り切って着物を着て行ったのです。
最前列の真ん中のブロックで着物を着ていたのは私だけ。
なんかやたらと幸四郎と目が合うなあと思っていたら
こっちに水がかからないように大桶の中で暴れてくれたのでした。
(たぶん自意識過剰とかではないと思う)
すごいねー。

松緑の奴踊りもよかったし
菊五郎丈の髪結新三も安定の悪役だったのだけど
今回ははじめの研ぎ辰に全部持っていかれた感じがします。

同世代の活躍に力をもらって
もっと頑張ろうと思いました。

ベルリンフィル

今月は幸運にもチケットが取れたので
大奮発して、超レアチケットの
ベルリンフィルハーモニーオーケストラ(BPO)の
サントリーホール公演に行ってきました!

11月のサントリーホールは
ベルリンフィル以外にも
ウィーンフィルウィークもあるし
ロイヤル・コンセルトヘボウに(しかもパーヴォ・ヤルヴィ指揮)
フィラデルフィア管弦楽団もいるし
一年の中で最も豪華なのです。


安定の響マーク


体調が回復途中にあると言われるマエストロ
ズービン・メータ。
杖をついてのご登場でしたが、
何回ものカーテンコールも都度歩いていらして
足取りは確かなようにみえました。

それにしてもBPOは徹底した個人主義と言われるだけあって
体の動きはバラバラなのに出てくる音は巨人が一人で奏でているかのよう。
直前までやってやるぞという気迫も何もなく普通に笑顔の団員たちが
タクトが下された瞬間からピッチもタイミングも音の切り方も
これ以上ないほどに揃った素晴らしい音を響かせてくれる。
まるで劇が目の前で演じられているように。
熱のこもった音の洪水が押し寄せてくる。

こんな至福があったことを長いこと忘れていました。
やっぱりどんなに贅沢と言われてもいいから、
年に一度はこのレベルの演奏をサントリーホールに聴きに来たいものです。

おちゃのおとvol.8


明大町づくり道場が刊行に携わっている
お茶の水のフリーペーパー「おちゃのおと」の
最新号が出来上がりました。
前回に引き続きレポートさせていただいております。

提携各店で使えるお得なクーポン券も豊富です。
ぜひ御茶ノ水で手に入れてくださいね。

海老蔵展

このところいろいろと立て込んでいて
アップするのが遅くなりましたが
9月8日まで日本橋高島屋にて開催されていた
海老蔵展へ行ってきました。

来年の5月には團十郎になるから、しばらく「海老蔵」にはお目にかかれません。

会場のあちらこちらで写真OKだったので
写真多めで続きます。

助六由縁江戸桜



暫の大太刀。
これはレプリカを触らせてもらえて、
枠の中で持ち上げる体験ができるのですが
重くてたいへん。

これらの重さがどれだけあるかという説明。
脇に小さな俵が積んであって、重さも体験できます。

かつら3kg
衣装56.5kg
大太刀3.5kg
総重量63kg

ろくじゅうさんきろぐらむ!
おとなじゃん!

それで踊ったり六方踏んだりするの?
とんでもない重労働!!
と、改めて思いました。

歴代の海老蔵にまつわる資料など貴重なものもありました。
皆さんそれぞれ、芸術全般に亘って造詣が深くていらっしゃる。


父親としての気持ち。


お子さんたちのことも。


読んでいて胸の痛むこと。。。
本当に、心から応援します。


デパート正面の入り口には助六の等身大パネルと
助六が差している傘のレプリカが。

せっかくなので助六を気取ってみました!

八月歌舞伎座

八月納涼歌舞伎@歌舞伎座
第三部の「新版・雪之丞変化」に行ってきました。

若手女形の雪之丞(玉三郎)は実は長崎で両親を悪党に殺されて、
歌舞伎役者のに引き取られ、役者業に励みながら親の敵を討つべく修業を積む
という、仇討ちもの。
でも、その中に「役者とはなにか」とか「芸とはなにか」とか
いろんな葛藤が描かれている。

新版、とだけあって、演出にも相当力が入っている。
スクリーンを使って事前に収録した背景や役者の演技と、
舞台上の生身の役者がセリフのやり取りをするシーンがあったり、
舞台にカメラを構えた黒衣が上がって、
至近距離から役者を撮影したものを
ライブで後ろのスクリーンに流したりする演出とかね。
松竹の本丸歌舞伎座で玉さまがこれをやるって、すごいこと!

八月は南座の超・歌舞伎で獅童が初音ミクと掛け合いをやっていたらしいのですが、映像と掛け合いって流行ってるのかしらん。
映像はタイミングやスピードが決まっているから、
毎回同じに演技をしなくてはいけない生身の役者は気を張るだろうと思う。
カラオケみたいに、ずっと伴奏が流れているわけではないしね。
あと、やっぱりどう頑張っても次元の壁は超えられない。。。
難しいねぇ。。。

特に、舞台役者の生声と収録音声の違いがものすごく耳についてしまって。
収録してある部分が全部「夢」とか「回想」のシーンとして使われているのなら
その違いで区別をうまくつけている、とも言えるかもしれないけれど
観ているその場の流れではあまりそういう区別は感じなかったように思います。
それでハッと思い出したのは、
昔からハーモニカ界隈で続いている「マイク要不要論」。
ハーモニカは音が細いので、他の楽器とやるときや大きな会場の時は
どうしてもマイクに頼らざるを得ない。
マイクはないと困るけれど、そうすると音色が変わってしまうから
他の楽器と足並みが揃わないし、違和感がある。
音が細いからマイクは必要、
うまく付き合っていこうという先生と
あくまで生音は生音同士で、
楽器の生の音を楽しめる空間や工夫で勝負しましょうという先生の
両方とも一理ある議論がずっーとなされていて
両方とも一理あるから決着を見ない訳ですけどね。
なにか、考えるきっかけになるかもしれない。

閑話休題。
この演目、ひとことでいうと「The・玉三郎」。
シネマ歌舞伎で観た方が面白いかもしれない。
というか、シネマ歌舞伎で観ることを前提に作っているのじゃないかなぁ。
舞台に出てくる役者は、
雪之丞の玉三郎丈、
その師匠役に市川中車(=香川照之)、
兄弟子役に中村七之助、
ストーリーテラー・クラウン的存在の鈴虫
の4名だけ。

雪之丞がお役で舞台に立っているシーンは、
実際に玉さまが舞台で踊るのではなくて、
過去の八重垣姫や赤姫や白拍子花子の映像が後ろのスクリーンに投影される。
あの時の玉さまをまた舞台で観ることができるのは、
ファンにとって嬉しいことなのかもしれないね。
それだけではなくて、途中で果敢なくなってしまう兄弟子の
「時を掴め」といういまわの際のセリフや、雪之丞が
「役者、特に女形は世間様のお役に立っているのだろうか」と葛藤するセリフなど、
随所に玉三郎が実際に経験したことなのではなかろうかと
思ってしまうものがあって、それも含めて「The・玉三郎」。

そういうところは面白いのだけど、ここで映像を使うのか、とか
これなら文楽人形にでもやってもらった方が面白いんじゃないかなとか
すべてを映像に置き換えていることに対してちょっと違和感を感じる部分もあり。

中車が映像・早変わりも含めて4役務めていて、なかなか大変そうだったけれど、
先日の長谷川伸の作品やちょっと新派チックな作品には、
中車丈はもってこいかも知れない。

一番観ていてワクワクしたのが、兄弟子役の七之助と玉さまが
歌舞伎談議に花を咲かせるところ。
お酒の入った兄弟子(=七之助)に
「お前さんは将来どんな役をやってみたいんだい?」と言われて
あれやこれや名シーンの希望をだしながら二人で軽く演じるところ。
七之助の痘痕の次郎左衛門なんて、
一瞬、十八世勘三郎が出てきたかと思うくらい似ていたし、
玉さまの揚巻なんて、浴衣姿なのに吉原一の花魁揚巻に見えるっていう。
七之助が助六を演ることも本舞台ではなかなかないでしょうから、
かっこいいなぁと、ちょっと得した気分。

とここまで書いて思った。
もしかして、これって今までのシネマ歌舞伎の集大成?
また新しいステージの扉を開けるための。。。

だとしたら、ますます楽しみになってくる。
ロビーには、先日の演目「幽玄」のシネマ歌舞伎の宣伝が。

観に行く!!